MAKING OF YOU #001
好きなものを好きなだけ追求する。多くの愛してやまないに囲まれて過ごす日々。
独自の審美眼によって選ばれた「もの」と「こと」。その美学であったり、マイルールを気になる求道者たちに尋ねてみた。
STORY OF TEXTA
CASE 001
今回、選んだものは昔から風化せずに好きなものですね。好きなものは昔から変わっていませんが、そこには懐古主義的なものは一切ありません。日々新しく好きになる物もたくさんあるので(笑) 元々、物心ついた時から凝り性というよりはオタク気質という感じでなので、目に入る情報や気になる情報はとにかく徹底して掘り下げます。今やそれもグラフィックデザイナーという職業柄が手伝って加速していますね。世間の価値や希少性より何であろうとも自分が気に入るかが大切だと思っています。
HAND DRAWN
手描きでしか表現できない線
グラフィックに関しては、ほぼ手描きで下絵を描いてからデータに起こすことが多いですね。全てに対して必ずしも手描きにこだわっている訳ではありません。依頼されるグラフィックを具現化するにあたって、そのイメージにふさわしい手法が手描きであるという割合が高いだけかなと。
ただ手描きだと一本一本の線の存在に対して、より真剣になれますね。技術的なごまかしがきかないと言いますか。絶妙な加減で線の太さのバランスは手描きの方がとりやすいので、細かいグラフィックになればなるほど手描きが多いかもしれません。
個人での作品以外は、洋服に落とし込むグラフィックが大半なので一番は洋服への馴染みを優先的に考えています。意外と手描きの方が経年感とかも出しやすいんですよね。
WORDS ON CLOTHING
服になった時をイメージして描く
絵を描く前に刺繍の種類やプリント手法といった表現手法やボディー生地特性を必ず考慮してから描いています。というよりは意識的に描き分けていますね。どんなに素晴らしいグラフィックでも、その後の洋服に落とし込む工程とマッチングしない以上は結果として満足いくものにはなりませんので。
着地点としては、洋服になった時の完成度を求めています。グラフィックを起こしたから、はいどうぞって相手に渡して終わりではありませんからね。細かいですが刺繍の一振りから、プリント手法に合わせて工場を変えたりと、そこまでの指示を考えて描いています。
RADIALLの場合、50年代ライクなレーヨンシャツに刺繍を施すことが特に多いので、そのボディーが持つ時代背景に合わすようにしています。当時の生活様式を徹底的に調べて理解をすることで、グラフィック自体にも自然と奥行きが生まれますしね。着ている人が見たことないけど見たことあるような、どこか安心感を感じれるようなグラフィックというのをずっと目指しています。
LONG BEACH DUB ALLSTARS
友好関係から生まれたアートワーク
SUBLIMEももちろん大好きですが、その後のOPIE ORTIZ率いるLONG BEACH DUB ALLSTARSは格別ですよね。そんな彼とは約6年前に知人を介して東京で初めて会ってから、渡米した時にはタトゥースタジオに遊びに行ったりと定期的に会うようなりました。
昨年の12月、OPIEから突然連絡がありワールドツアーの日本版フライヤーを描いてくれとまさかのオファーが。一緒に仕事ができることももそうだし、あのLONG BEACH DUB ALLSTARSのデザインを描けるとは夢にも思いませんでしたね。そして、あの太陽も描いて良いとの許可も。
意外にもプレッシャーは感じずに楽しめて取り組めましたね。その分、製作日数は累計で40時間くらいかかりましたが(笑)昔、憧れていた90年代のロサンゼルス感を意識し、描き方とモチーフはトラディショナルに徹底した上でBICのボールペンで描きました。あの当時の懐かしいあたたかい感じは出せたんじゃないかなと。こうやって、みんなの思い出のアイコンを描けて光栄ですね。
JACK RUDY
今も変わらず影響を受け続けるアーティスト
あえて細かい説明は省きますが、タトゥー界のリビングレジェンド ジャック・ルーディー。彼が2015年のCLASSIC LEGENDSで来日した際、数日間だけ八王子の我が家に泊まっていました。このスウェットはその時、自分のアトリエでくつろぎながら一緒にマジックで描いたものです。
過去のRad’s Mag撮影でよく渡米していた頃から彼との交流はありましたが、四六時中と言っていいほど行動を共にしたのは初めてでしたね。一緒にラッシュアワーの山手線に乗ったりも(笑)
世界的にも著名なアーティストと共に過ごせた時間と経験が今の自分の筆跡にフィードバックされていると思います。
今回はお見せしていませんが、このスウェット以外にも色々とレアなアートワークを描いてもらえたので大切に保管しています。
TACOS OF LOS ANGELES
1日3食でも飽きないタコス
もしかしたらご存知の方も多いかもしれませんが、、、自他共に認めるタコス好きです(笑)
タコスといっても地域によって製法から味付けなどスタイルが大きく異なっています。自分はその中でも、ロサンゼルススタイルのタコスが好みですね。(ちなみに”NO CHEESE ON MY TACOS”というメッセージはここが由来です)
渡米した際は、ほぼほぼ3食がタコスだったりすることもざらにあります。ここ最近では都内でも様々なタコスを提供するお店が増えて嬉しいかぎりですね。タコス好きとしては、できる限り色々なお店に足を運ぶようにしています。
ICE CUBE主演の映画 FRIDAYに出てくるBIG WORMだったりと元々はアイストラックが好きだったんですが、いつの日かタコスに出会ってからはタコストラックに完全に切り替わりましたね。
CHEVROLETのP20やステップバンのおもちゃを見つければ、タコトラに自分で改造して遊んでいます。そんなこともあり、身の回りにタコス関連グッズは増える一方です。
TACO TRUCK
タコトラまるまる一台をペイント
タコス好きが高じてか、知人を介してタコスの移動販売車タコストラック(通称タコトラ)のペイント依頼を受けました。一度はやってみたかったことなので、ありがたかったですね。昨年の夏から今年の冬まで、少々時間はかかりましたが全て一人で描き上げました。終盤ではトラックと話していたほどになりました(笑)
ここ最近、コマーシャルとして街中でよく見かけるラップペイントに寂しさを感じていたので、あえてペンキで描いて人間味を演出しました。今回、目指したのは1990年代の中頃にロサンゼルスを走っていたようなタコトラ。事前の下絵スケッチは一切せずに、その時その時のインスピレーションを頼りにしました。レターの配置バランスや各所フォントの種類はバラバラですが、引きで見た時にまっていると思いますね。
今回タコトラを描かさせてもらったChapman Tacosは、移動販売のみなので以下リンクから出店情報を探して、ぜひ食べに行ってみてください。
Chapman Tacos
MAGAZINES
イメージが膨らむ雑誌
個人的にも仕事的にも情報を追いかけることは日課になっています。自分が好きな70年から80年代の情報を探してもウェブ上だと追えきれない部分が今でもたくさんあるので、当時の紙媒体は収集し続けています。やっぱりその時代に生まれていなかったので、その当時の生に近い情報を求めていくと最終的に雑誌に行き着きました。
写真集も良いのですが、週間雑誌の方がフォーマットとして生々しく、当時の情景が浮かび上がってきますね。特に当時のLOWRIDER MAGAZINEは地域色が強く、コミュニティー性の高い雑誌といえます。投稿欄には手記やイラストがあったり、当時の映画、バンドレビューも当時の感覚を探る貴重な情報源になっています。
その延長線上でチカーノアートも私的程度ですが収集しています。ウェブ上でも探せば当時のスキャン画像も見れたりするのですが、実物や原画集が見たくなったのがきっかけで集め始めました。その中でもARTE DEL BARRIOは素人のイラスト投稿雑誌なので、当時の等身大の人々の生活を垣間見れます。いわゆる画集とは違う部分が特異点であり魅力的ですね。
ROOTS MUSIC
オールタイムベストな4枚
(左上から時計回りに)
Masta Ace Incorporated / Sittin’ On Chrome(1995)
オーストラリア留学中の高校3年時、年上スケーターに連れていかれたハウスパーティーで知ったアルバム。車を意識したベースミュージックが特徴。
V. A. / MOJO CLUB PRESENTS Dancefloor Jazz Vol.3(1994)
どのシリーズを購入しても外れのないハンブルグ発のクラブジャズのコンピレーション。ブラジリアンミュージックを聴くきっかけですね。
dj cam / underground vibes (1995)
豪でもアシッドジャズは流行っていました。当時の最先端をいく「B-Sharp」というレコードショップの店員に勧められ購入。トリップ・ホップの真骨頂。
U.F.O. / NO SOUND IS TOO TABOO(1994)
これも高校3年の時、当時の彼女にもらって初めてクラブジャズに触れた一枚。ジャンルレスな曲構成に影響を受けましたね。
GLOWS IN THE DARK POSTER
出会えばアメリカで買い続けるポスター
オーストラリアに留学中の高校時代、どこのヘッドショップに行ってもこのポスターはよく売っていました。当時収集していませんでしたが、ベロアに夜光塗料でプリントされたこのポスターは好きでしたね。意外ですが、ブラックムービーを観てると、劇中の家の壁にも貼ってあったりするんですよ。
今回、出しているポスターの大半は今は無きCompton Fashion Centerにあったヘッドショップで購入したものです。ヒップホップ好きならご存知の方も多いかと思いますが、惜しくも2015年に閉店してしまいましたね。
たまたま運良く閉店少し前に行けましたが、テナントの大半は閉まり、残っている店舗も閉店作業に追われている中でした。たまたま立ち寄ったヘッドショップのオーナーと仲良くなり、店頭には並んでいなかったポスターをほぼ丸々閉店セール価格にて譲ってもらいました。そこまで古くはない90年代ものですが気に入っています。
SCORPION DOME PAPERWEIGHT
これも出会えば買い続けるスコーピオンドーム
幼少期、本物の玉虫がアクリル樹脂で閉じ込められたキーホルダーが好きでした。よくお土産屋やデパートの物産展で売られていたやつですね。
それがきっかけで生き物がアクリル樹脂で固められている物全般が好きになりました。
時は流れて、初めてスコーピオンドームを見た瞬間にもう興奮してしまい即買いでしたね。ここ最近ではロサンゼルス近郊のスワップミートやアンティークモールではほぼ見かけなくなり寂しい限りです。
今ではもう現地で見つけるとすぐに購入しなければと、責任感を感じるようになってしまいました(笑)
このアクリル樹脂好きの流れから、ガラス素材のペーパーウェイトやアシュトレイにも興味を抱くようになり収集癖に火がついた感じですね。
渡米した時や国内の骨董屋に立ち寄れば常に探しています。
LOWRIDER BICYCLE
自分で組み上げたローチャリ
日本の家族からの仕送りの中に92年頃の雑誌Fineが入っていて、そこにローチャリが載っていたのが最初でした。そのかっこう良さは衝撃的で一目惚れでしたね。ちょうどアデレードのティーンエイジギャングにBMXを立て続けて2台盗まれたタイミングでもありました(笑)
早速欲しくなり探すも、当時のオーストラリアはBMX隆盛時だったので復刻はされておらず、どこにも売っていない状況でした。そんな時、たまたま近所のガレージセールに入ったら70年代の20インチクルーザーが格安でいくつも放り出されているのを見つけたんです。
ベースを購入してからは、好きなパーツが付いている車体を買ってはパーツ取りを繰り返しカスタムしていました。英国規格の車体はSCHWINNよりも一回り大きくて乗りやすく、ギア内臓だったので高校3年間はそれで通学していましたね。
日本に戻る時は持って帰らなかったんですが、5年前に現地の友達から突然「お前のローチャリあったよ」と連絡が入り、妙な縁を感じ日本に送ってもらいました。久しぶりに見た車体はいくつかパーツが無くなっていたので、日本でカスタムし直しながら現在進行中といった感じです。
TEXTA / @texta8000
1978年生まれ、東京都出身。グラフィックデザイナー。
愛車はダイハツのロッキー。
RADIALLを中心にウェア、バンドグッズ、広告イラストのグラフィックなどを多岐に渡り手掛けている。日々、昼夜を問わず、2Dから3Dまで全ての対象物にペンと筆を走らせており、無尽蔵な好奇心とスタミナを持つ。
音楽プロダクション MINDGHETTO主宰という一面も。
MINDGHETTO